近年、入院患者に対する「早期離床」が注目されています。早期離床とは、急性期や術後の患者に対し、できるだけ早い段階で起き上がる、座る、立つ、歩くといった運動を促すリハビリテーションの一環です。
これは廃用症候群や合併症の予防、回復の促進を目的としています。
本記事では、早期離床の意義やエビデンス、具体的な運動プログラム、注意点について解説します。
長期間の安静は筋力低下、骨密度の減少、循環機能の低下を引き起こし、廃用症候群のリスクを高めます。特に高齢者では、安静期間が1日延びるごとに筋力が1~5%低下すると報告されています(参考:Kortebein et al., 2008)。
メリット
・筋力・筋量の維持
・関節可動域の維持
・自立度の向上
長期間のベッド上安静は肺機能や心臓機能に悪影響を及ぼします。早期離床により、肺炎や血栓症の予防、心肺機能の回復促進が期待されます(参考:Morris et al., 2016)。
メリット
・肺炎や無気肺の予防
・深部静脈血栓症(DVT)のリスク低減
・心拍出量の維持
早期離床は、認知機能や精神的健康にも良い影響を与えます。ICUでの長期臥床はせん妄のリスクを高めるため、適切な運動介入が必要です(参考:Schweickert et al., 2009)。
メリット
・せん妄の予防
・不安・抑うつ症状の軽減
・生活の質(QOL)の向上
急性期では、まずベッド上での軽い運動から始めます。
・下肢の自動運動(足首の曲げ伸ばし、膝の曲げ伸ばし)
・深呼吸運動
・体位変換
患者の状態が安定したら、ベッドサイドでの座位保持や立位保持を促します。
・ベッドの端に座る練習
・介助を受けながら立ち上がる
・平行棒を使用した立位保持
歩行能力が回復しつつある患者には、歩行訓練を進めます。
・歩行器を使用した歩行
・看護師や理学療法士の見守り下での歩行
・廊下や病室内での短距離歩行
1. 患者の状態を適切に評価
早期離床を実施する前に、バイタルサインや全身状態を評価することが重要です。低血圧や頻脈、呼吸困難などの症状がある場合は無理をせず、慎重に進めます。
2. 転倒・転落リスクの管理
高齢者や衰弱した患者では、転倒リスクが高まるため、適切な介助や環境整備が必要です。
3. 疼痛管理
手術後や急性疾患の患者では、疼痛が離床を妨げる要因となるため、適切な鎮痛剤の使用やポジショニングの工夫が求められます。
早期離床は、入院患者の回復を促進し、合併症を予防する重要なリハビリテーションの一環です。運動を適切に取り入れることで、筋力や心肺機能の維持、精神的健康の向上が期待されます。
1.Kortebein, P., et al. “Functional impact of 10 days of bed rest in healthy older adults.” The Journals of Gerontology Series A: Biological Sciences and Medical Sciences, 2008; 63(10): 1076-1081.
2.Morris, P. E., et al. “Early mobility in the intensive care unit: a systematic review and meta-analysis.” Critical Care Medicine, 2016; 44(5): 1001-1010.
3.Schweickert, W. D., et al. “Early physical and occupational therapy in mechanically ventilated, critically ill patients: a randomised controlled trial.” The Lancet, 2009; 373(9678): 1874-1882.