「リハビリテーション」(Rehabilitation)は、re(再び、戻す)とhabilis(適した、ふさわしい)から成り立っています。 機能訓練による機能の回復は勿論ですが、「人として生きる」「自分らしく生きる」ことが重要で、そのために行われるのがリハビリテーションと言われています。
それでは、リハビリテーションの歴史についてご紹介します。
リハビリテーションの歴史は、古代から始まります。古代エジプトでは物理療法(※)が行われており、負傷兵や疾患患者さんの回復をサポートしていました。
※物理療法・・・「温熱」「寒冷」「電気刺激」など、物理的なエネルギーを利用して症状の軽減、痛みの回復を促す治療法
当時の物理療法とはどんなものでしょうか? 驚くことに電気の存在自体が十分に理解されていない古代エジプト時代に、シビレエイなどの発生する電気を用いて既に電気刺激法は行われていました。
また、古代ギリシャでは運動療法が行われ、運動とリハビリテーションの結びつきが初めて示されました。
リハビリテーションという言葉は、中世のヨーロッパで生まれたものです。そのきっかけとなった人物がフランスの英雄として知られるジャンヌ・ダルクです。彼女は1431年に火あぶりの刑に処されましたが、1456年にローマ教皇が「ジャンヌ・ダルクは無実である」と判決を下しました。
ジャンヌ・ダルクの無実が証明されたことは、「再び適したものにする」「再びふさわしいものにする」ということで「リハビリテーション」(Rehabilitation)と呼ばれました。
中世ヨーロッパでは、修道院が医療とリハビリテーションの中心でした。修道士たちは患者さんのケアと回復を担当し、疾患や傷害から回復し、社会に復帰する手助けを行っていました。
この時期にリハビリテーションの原点が形成されたと言われています。
18世紀になると、リハビリテーションの考え方が進化しました。特にフランスで盛んに行われる様になり、運動療法を中心とするリハビリテーションプログラムを提唱され、これによりリハビリテーションの科学的アプローチが初めて導入されました。
また、装具による姿勢矯正が取り組まれ、側弯症(※)への矯正術を象徴する図絵は日本整形外科学会のロゴとしても広く親しまれるものとなっています。
※側弯症・・・脊柱を正面から見た場合に、左右に曲がっている状態で、背骨自体のねじれを伴うことがある症状
日本整形外科学会 シンボルマーク(出典:日本整形外科学会)
20世紀初頭には、急性灰白髄炎と呼ばれる、急性の麻痺が起こるポリオウイルスの流行が世界中で恐れられました。この流行はリハビリテーションの発展に大きな影響を与えました。ポリオの治療とリハビリテーションの進歩は、多くの障害を抱えた患者さんに新たな希望をもたらしました。
理学療法、作業療法、言語療法など、リハビリテーションの専門分野が急速に成長し、患者さんへのカスタマイズされたアプローチが確立されました。
20世紀中盤に入ると、医学と科学の進歩がリハビリテーションに大きな影響を与えました。リハビリテーション医学が新たな高みに到達し、リハビリテーション工学の分野が形成されました。
さらに、電子機器やコンピュータ技術の導入により、リハビリテーションプロセスが効率化され、患者さんへの効果的なケアが提供されるようになりました。
現代のリハビリテーションは総合的なアプローチを取っており、さまざまな専門家が協力し、患者さんの回復を支えています。リハビリテーションの研究と科学の進歩により、リハビリテーションの方法と効果が向上し、患者さんの生活の質を向上させるのに役立っています。
リハビリテーションの歴史は、人類の回復への長い旅を示しています。古代から現代にかけて、医療従事者と科学者はリハビリテーションの方法を進化させ、患者さんの生活を改善するために尽力してきました。リハビリテーションは、疾患や障害に苦しむ人々に希望と力を与え、その未来はさらに明るいものとなるでしょう。
この歴史を尊重し、最新のテクノロジーやアプローチを活用して、患者さんへの最高のケアを目指していきたいですね。