2023年8月取材【アーカイブ配信】
B-SESでリハビリの効果を高める
ー施設の特徴
当院は、入院の無い通所のみの医院で、外来患者さんのみ治療を行っています。当院がある農村部で働いている方はほとんどが高齢者なので、当院はそういった方に適切な医療を提供しています。
2016年4月からは介護保険を導入し「通所リハビリ」を開設してリハビリの拡充に努めています。当院は開院当初リハビリはありませんでしたが、理学療法士を1名採用してからはリハビリをどんどん拡げるようにしてきました。患者さんは整形疾患の方がほとんどで、整形疾患の治療にリハビリは無くてはならないもののため院長と共に拡げています。現在は、理学療法士3名でリハビリを行っています。
ーB-SESの利用対象者
リハビリに来られる患者さんは、除痛目的で来られる方がほとんどです。現在は、診療点数や保険の問題などで少なくなっていますが、維持期のリハビリが全盛だった頃は、リハビリの患者さんが除痛目的でたくさん来られていました。また、数はちょっと少ないですが、形成の疾患の方や受傷直後の患者さんにもリハビリを行っています。
ーB-SES導入の経緯
当院は「通所リハビリ」を開設した2016年にB-SESを導入しました。B-SES導入の経緯は、私が当院に入職する前から、院長がオートテンズプロを使用していて、ホーマーイオン社さんとは関わりがありました。B-SESの導入は、院長がB-SESに興味を持ってデモを依頼し紹介していただいたのが最初です。院長から私にお話を伺うように指示があったのですが、私もB-SESにはとても興味がありましたので、私から院長に「是非B-SESを導入してください。」とお願いしました。
B-SESは運動器疾患に対する疾患別リハビリのひとつ
ー理学療法士によるB-SESの活用
B-SES導入以前と導入後を比較してみると、B-SESの導入前は、消炎鎮痛で行っていた電気治療や低周波の治療、いわゆる物理療法を行うのがほとんどで、電気系の治療だけを行っていました。しかし、B-SESを導入して、理学療法士が運動器疾患に対する疾患別リハビリのひとつとしてB-SESを用いるようになり、理学療法の点数の中でB-SESを使うようになりました。それがB-SESの導入前に比べて最も大きく変わったことです。私はそこを売り出すといいますか、他とちょっと差別化を図るという意味合いでも、介護保険でリハビリをするにあたって理学療法士が介入していけること、消炎鎮痛だけではなく、また、介護の方の維持を目的とするだけではなくて、介護でリハビリをされる方の治療という目的も含めて行うことが出来るようになったと思います。
当院の患者さんの多くは整形疾患の方のため、リハビリの一番の目的は下肢筋力の強化です。それを前提として、変形性膝関節症の方やそれ以外の方、廃用で筋力トレーニングが出来ずに筋力低下がある方に関して、B-SESの使用を始めました。
B-SESを導入した最初の段階では、B-SESの使用の判断は、完全に医師からの指示で行っていましたが、導入して2年ほど経った頃から、理学療法士から医師に「この患者さん、B-SES適用だと思うんですが。」「この患者さんにB-SESを試してみたいです。」といった形で患者さんへのB-SESの適用を上申していくようになりました。
B-SES実際の使用については、理学療法士がベルトを巻くなど、全てのコントロールを行っています。
ーB-SESの使用頻度
B-SESの使用頻度については、毎日通う患者さんもいらっしゃいますし、算定期間内のぎりぎりいっぱいまでB-SESをしてリハビリを終える方もいらっしゃいました。しかし、そのようなケースは稀で、ほとんどが週2回の維持期のリハビリや介護保険を利用しての通所リハビリでです。
B-SES1回の使用時間は、患者さんによって異なりますが、大体20分から30分です。当院では30分も1単位で行っています。ほとんどの方が1単位で行ってるので、B-SESの使用は1単位にしています。
B-SESの使用からADSL検査も日常生活動作も安定
ー患者さん、医師、理学療法士、それぞれのB-SES
医師の意見では、筋力低下や廃用、歩行困難などの障害のある方に対して、一般的なオーダーで理学療法の指示を出した場合、その理学療法では結果が出にくかったり、治療効果が表れにくい患者さんに対して「B-SESの使用」という選択肢が大変有用である、といった話を聞いたことがあります。
理学療法士としては、B-SESは他の物療機器や低周波治療器とは一線を画していて、筋力強化に対して凄い効果を発揮していると思っています。高齢者を例に挙げますと、彼らは運動が出来ない、または運動がしにくい方々であり、普通の筋力強化の方法で、こう、「1、2、3」と声掛けをしながら、ご自身のスタミナの力を使って歩くよりは、B-SESを使って、寝た状態で、楽な姿勢で筋力を鍛えられるほうが筋力強化を進めやすいと思います。
私は、筋力強化をするための導入段階として最初に代謝モードから使う形で進めています。また、理学療法士側の意見として多かったのは、スポーツ選手に対しての効果です。当院での事例は少ないのですが、急性期の患者さんで、骨折や靭帯損傷をしてすぐの状態、または、術後のパフォーマンスの復帰、職業復帰といった、短時間での効果を要求される場合などに理学療法士が行う筋力トレーニング、プラスアルファでB-SESを利用させてもらっています。患者さんの感想としても、スポーツをしてきた方にはB-SESはすごく受けが良いです。
ーB-SESの使用目的と効果
B-SESの使用時に、自分たちが気を付けている点として、高齢の方に関してはなるべく痛みが出ないように、導入しやすいように、入りやすいように気を付けています。反対に、スポーツ選手は比較的若めの方が多いので、B-SESの刺激強度を上げて使っています。ただし、B-SESの刺激強度を上げていくにつれて少し痛みが伴います。その痛みがトレーニングをしている感覚に近いと喜べる方と、それを苦手に感じる方で、B-SESの刺激を受け入れる感覚は全然違います。そのため、患者さんには最初に先ずB-SESの刺激強度に対しての耐性を訊いてから始めるようにしています。
スポーツの復帰を目指している方や、パフォーマンスを上げたい方に関しては「キツいけど頑張ろう。」といった声掛けをしながらB-SESの刺激強度を上げていくようにしています。B-SESの使用後にはその使用感を訊ねて、「良かった」という感想を引き出せるようにしています。
B-SESを使用する目的は筋力強化ですので、その目的のための運動耐性も高めてゆくという意味合いで使用しています。B-SESを使用したことの実際の効果や感想は、使用するB-SESのモードによって違いますが、例えばB-SESを代謝モードで使用された方は、使用後の感想として「足が軽くなった」と言われる方が多いですね。「今まで動いてなかった筋肉が動いた!」と言われる方もいらっしゃいました。
ユニークな例を挙げると、B-SESを何回か続けて使用され、代謝モードから廃用ソフト、廃用モードまで進まれた方がいらっしゃいました。B-SESの使用を続けていくうちに、B-SESの強度に対しての耐性が付いてきて「自分的には筋力が付いた。」といった感覚が増してこられ、ADL検査の結果も実際の日常生活の動作も安全に安定して行えるようになりました。そうすると、ご自分が動けるという意識と活動性が高まりすぎて、外に出かけられて転倒してしまった、という事例がありました。幸い大事には至らなかったのですが、歩けるようになって外に出られる機会が増えて、実際歩きやすくなったことが嬉しくなり、ちょっと無理をされて転倒してしまったそうです。
結果としては少し良くはありませんでしたが、私としてはB-SESを使うことが、そのぐらい患者さんのモチベーションや患者さんご自身の動けるという感覚に変化を起こすものと捉えています。若い方やスポーツをされている方も、筋力変化を自覚されていて、パフォーマンスが上がったというお話もありました。サッカー選手の方で、ボールを蹴る感触が良くなった、ボールを遠くまで飛ばせるようになったとも聞いています。
B-SESを使用することは、理学療法士にとっても治療法の引き出しが増えたというイメージを大いに感じます。B-SESの使用が、今までの物療とはちょっと違う感覚というのが理学療法士自身にもありますし、B-SESを使用されている患者さん自身の受け取り方を見ていると、やはりこれは特別な事をしているのだと感じます。理学療法士が患者さんにベルト電極を巻いて、筋力トレーニングのために、それに特化した機械を操作している。患者さん自身も、自分が今どういうトレーニングをしているかを明確に受け取れている。それは理学療法士としても治療を進めやすく、患者さんからも「吉田整形外科に行ったら、こんなこともしてくれるよ」と言っていただいて、当院にとってもすごい宣伝効果になっていると思います。
ー診療報酬の算定方法
当院ではB-SESの使用について、はじめはB-SES単独で運動器、疾患別リハビリテーション、『運動器2』で算定をさせてもらっていましたが、現在は単独での請求は止めていて『理学療法士の介入とB-SES併用』という形で、1単位取らせてもらっています。これは、患者さんにとっては良いことだと思いますし、B-SESの使用は他のクリニックなどとの差別化という意味合いもあるので、それで良かったと思います。
B-SESの進化に期待し続ける
ーB-SESに対するご意見やご要望
当院では、私が主にB-SESを使っている患者さんを担当していますが、私のB-SESの機能に対しての希望として、足首より下の部分のベルト、例えば足関節を八の字に巻けるようなベルトがあればと思っています。足関節を跨ぐ形でベルトを着けられる、そのようなベルトが欲しいです。それはB-SESという機械の意味からすると、あまり重きを置いていない部分かも知れませんが、膝から下の部分の筋力の強化に関して電極を着けて、足底や足の裏、足関節よりも下の部分に電気を流すことが出来たら、すごく幅が広がると思います。
当院は整形外科なので、足首の骨折や足の指が動かないといった患者さんも多くいらっしゃいます。そのような患者さんに対してもB-SESを使おうとすると、ベルトが少し届かない、そこまで巻ける機能がないのです。私なりに試してはみたのですが、やはり足首より下はベルトが巻きにくいので、足首より下の部分のベルトがあれば良いと思います。私はB-SESの実際のメカについては全然勉強できていませんが、膝関節を跨いでの使用では良い効果が出ているので、きっと足関節についてもすごく良い効果が出るんじゃないかなと考えて、期待をしているところです。
また、運動麻痺や末梢神経の障害などの神経系の患者さんに対しての症状の改善について、B-SESがどこまでの治療効果があるかというのを明確にして、もっと適応法を増やしていきたいと思っています。B-SESの使用が神経系の症状にも良い影響があることにもすごく期待しています。実際の治療現場で理学
療法士が、患者さんに「ここの部分にB-SESを着けたら、電気の力で筋肉を発達させられるよ。」と伝えてあげられるようにしていきたいです。B-SESの使用法について、もう少し細かく調べられたら出来そうな気がしています。B-SESであれば、足首や指先など、もっと様々な部位への効果があると期待しています。
私はB-SESについて、実際の使用だけでなく、その文献を読むなどしていて、B-SESの今後の展望についてもすごく期待をして見ています。私がずっとB-SESに注目・期待している理由は、B-SESをひとつの低周波治療器に纏め上げるのは勿体ないといいますか、普通の物療の電気治療機器の形に収まってほしくないという思いがあるからです。
私は、理学療法士が患者さんにB-SESを着けることと、他の職種のひとが着けるのでは、作業内容に差別化を図らなければならないと思っているタイプです。B-SESは誰が使っても効果がある、というのがもちろん一番良いのですが、それでも理学療法士がプロトコルに従って手順を踏んでいくことや、例えば、ある部分の筋肉をより強くしたいのでB-SESのベルトの巻き方や電気刺激の強度を調整するといった、細かい調整が必要だと思っています。
実験的にしかやっていない事例ですが、実際にベルトを患者さんの足に巻くとき、その巻く位置にしても、筋腹に巻くのか、筋肉の起始や停止の部分に巻くのかというだけでも、患者さんの筋肉の変化が違っているような気がします。そこに、理学療法士が専門的な目で「ここが必要だから、もうちょっと上に巻こう。」とか「もうちょっと下に巻こう。」など話しながら、エビデンスを作っていき、B-SESのベルトの巻き方と、その効果が更に解れば、もっとおもしろい機械になるなと思っています。