2022年9月取材【アーカイブ配信】
透析時の運動療法を充実する為複数施設でB-SESを導入
ー両施設へのB-SES導入の背景
近年80歳を超えて透析導入される高齢の患者様が増加しています。そしてもう一方で、透析歴が20年、30年と、長期になる患者様もいらっしゃいます。そうした方々には、もともと運動する習慣のない方が多く、高齢化もあって、フレイルやサルコペニアの対策は透析治療の現場でも重要課題の一つとなっています。
これまでも透析中にベッド上でもできる下肢運動やストレッチ、パット式の電気刺激の使用、家庭での体操指導なども行っていましたが、十分といえるものではありませんでした。そのような状況でB-SESを知り、初めに「みつはし医院」で、運動療法の取り組みとして、導入しました。更に「からし種診療所」は、開業したばかりの新しいクリニックで、運動療法にB-SESを取り入れていることを特長として出したいと考え、導入しました。
将来的な運動習慣のきっかけづくりやADLの維持・改善に
ーB-SESの利用対象者と、その目的・目指す効果
B-SESの使用では、運動習慣や日常生活動作における支障の有無などを伺い、対象者を抽出しています。当然、高齢者が多くなってきますが、若年の方でも該当する方へは積極的に利用を促しています。
B-SESを行う直接的な目的は、将来的な運動習慣へのきっかけづくりやADL(日常生活動作)の維持・改善です。
間接的には、副次的な効果としてよくいわれているメンタル面での安定や、認知症の予防なども考えています。また、B-SESを行うことで、透析効率の改善や心血管系イベントに対する予防なども期待しています。あと、そうしたことで患者様のQOL(Quality of Life)全般を押し上げることができるのではないかとも考えています。
ー患者様からの評価
患者様からは「足が軽くなった」「階段の上り下りが楽になった」「長い距離が歩けるようになった」など、多くの方から好評をいただいています。やはりB-SESを行った患者様は、効果を実感されるようです。そして、またやってみたいと言われる方が多いです。
中には廃用モードにすると、少し刺激が強くて継続できないという方も、いらっしゃいます。しかし、このような方には代謝モードを使って、そこから少しずつ使用していきたいと考えています。
リハビリのメリットを理解し看護師たちが積極的に実施
ーB-SESの実施と運用
B-SESの実施は、透析中に看護師が行います。ほとんどの方の透析は週3回なので、それにあわせて週3回、1回20分です。透析を始めて30分から1時間後ぐらいになると血流が安定してきますので、その辺りにB-SESを開始しています。透析の後半、4時間透析などは大体2時間ぐらい経った頃に、患者様によっては血圧が低下する方もいます。そのため、B-SESはそれよりも前に行うことにしています。
モードは、今は筋力強化というところで廃用モードを使っています。今後は代謝モードもうまく組み合わせて、人によって使い分けていきたいと思っています。B-SESの導入は各病院とも1台ですので、実施人数はそれぞれ大体1日で5人~6人ぐらいという感じで行っています。
現在は、1件の治療で3カ月間をめどに使用しています。なるべく多くの人に体験してもらいたいということで、3カ月ぐらいやって効果を実感していただければと考えています。
ー実施する看護師の方々の反応
以前から消炎鎮痛処置をやっていたこともあって、看護師たちは前向きに取り組んでいます。筋力アップやB-SESを使ったリハビリ系のことに関する、チームの責任者がいて、その人を中心に進めているという形です。
今回、新しく透析時運動指導等加算が付いたのも一つありますが、その腎臓系のリハビリテーションという分野で、今はいろいろなエビデンスが出てきています。リハビリをすることで生命予後が良くなるといったプラスの面がかなり分かってきていますので、治療の一環としてだけではなく、看護の一環というところで、看護師たちは積極的に行っています。
ー医療従事者から見たB-SESの効果
実際の効果測定としては、B-SES実施の前後で体成分分析装置の計測を行っています。これまで数値ではっきりと効果が認められた方は少ないですが、若年者で明らかに筋肉量の増加が確認できた方もいらっしゃいます。今後は実施期間を長くしたり、家庭での運動習慣につなげたりできたらと思います。
またB-SESで筋肉量がつくことによりADLが改善し、活動量が増加することで、こうした客観的な数値的効果がもう少し期待できるのではないかと思っています。
あと、よく透析をしていると後半に血圧が下がったり、人によってはこむら返りを起こしたりする方がいらっしゃいます。しかし、B-SESを導入してからは、そうした血圧の低下やこむら返りが起きにくくなったという印象があります。
透析時運動指導等加算の導入を、消炎鎮痛処置と組み合わせて有効に活用したい
ー現在の診療報酬や利用料
診療報酬は、消炎鎮痛処置として35点です。関節痛や疼痛といった、ADLに問題がある方を抽出し、治療という形で対応しています。
ー透析時運動指導等加算についての運用
透析時運動指導等加算については、算定のために運動指導の研修を受講した医師や看護師、理学・作業療法士が必要となっていますので、この条件をクリアできるように準備したいと思っています。
また、90日間と期間が限定されているので有効に活用して、これまでの消炎鎮痛処置とうまく組み合わせていきたいですね。やはり目的は患者様のADLを上げること、長期的に患者様のQOLを上げてくということですので、そのきっかけづくりなどに利用したいと思っています。
専門的な技量や経験にかかわらず誰にでもできるところがいい
ー施設としての利用メリット
いろいろなリハビリや消炎鎮痛処置の装置等は以前からありましたが、B-SESは装着や設定が簡単であって、専門的な技量や経験にかかわらず誰にでもできるところがいいです。
足が軽くなったとか動きやすくなったということを実感される患者様がいらっしゃいますので、やはりそれがメリットだと感じています。
ーB-SESと併せて取り組みたいこと
まだ具体的に見えていませんが、運動指導についてB-SESを中心に広げていきたいというのはあります。
あとは栄養指導ですね。どうしても透析をしている方は、タンパク質制限などを気にされる方が多いです。確かに以前はそうでしたが、最近はやはりエビデンスが出てきていて、しっかりと必要な栄養、主にタンパク質を摂っていかないと体がどんどん痩せていってしまうことがわかっています。そのため、今後はより積極的に、栄養指導なども含めながらやっていきたいと思います。