電気刺激は、筋力の低下に対する治療法として医療において多くの重要な役割を果たしており、その応用範囲は広範囲にわたります。 ここでは、その主な用途についてご紹介させていただきます。
疼痛は医療機関を受診する理由として最も多い体の痛みの症状で、多くの患者さんにとって深刻な課題ですが、電気刺激は効果的な治療方法の一つです。特に、Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation(TENS)は、皮膚を通じて低周波の電気刺激を神経に送ることで、痛みの感覚を変え、痛みを和らげる効果があります。
また、疼痛管理のための非薬物療法として、患者さんに治療の選択肢を持っていただくことができます。
電気刺激は、筋力の維持と筋肉の機能回復にも役立ちます。
手術後や怪我をした後、患者さんは筋肉の萎縮を防ぎ、機能を回復させる必要があります。この際、電気刺激が筋肉に刺激を与え、痛みを緩和する効果があります。このプロセスは、リハビリテーションの一環として非常に重要であり、患者さんの回復を助けます。
また現在では、高齢者の筋力低下の予防・維持にも電気刺激が重要な役割を担っています。
神経障害(※)による症状は、患者さんにとって大きな苦痛となることがあります。電気刺激は、神経障害の治療において非常に有用です。
特に、糖尿病性神経障害や神経痛の患者さんに対して、神経刺激療法が適用されます。電気刺激は神経回路を調整し、感覚異常や痛みを軽減するのに役立ちます。患者さんの生活の質を向上させる一助となっています。
※神経障害・・・細い血管が、血栓で詰まって神経に血液が通わなくなり、その部分にだけあらわれる障害
骨折は患者さんにとって日常生活に支障をきたし、回復に時間がかかることがあります。ここで電気刺激が登場します。
電気刺激は、骨折部位に低周波の電流を供給することで、骨の修復を促進します。このプロセスを「骨折治癒促進」と呼びます。電気刺激により、新しい骨組織の成長が刺激され、骨折部位が強化されます。これにより、骨折からの回復が加速され、患者さんの生活の質が向上します。特に、骨折が治りにくい部位や高齢者の治療において、電気刺激は有用な選択肢となります。
脳刺激療法(※)は、神経疾患や精神疾患の治療において画期的な進歩をもたらしています。
深部脳刺激療法(DBS)や経頭蓋磁気刺激(TMS)など、さまざまな技術が利用されています。これらの療法は、電気刺激を用いて特定の脳領域を刺激し、神経回路を調整します。たとえば、パーキンソン病やうつ病の患者さんに対してDBSが用いられ、症状の改善が期待されています。電気刺激療法は薬物療法や手術に反応しない患者さんに対して有用な治療選択肢を提供しています。
※脳刺激療法・・・脳の特定の部位に細い電極を挿入し、電気刺激を行う治療法
電気刺激は炎症性疾患(※)の症状管理においても効果的です。特に関節炎や腱炎などの疾患に苦しむ患者さんに対して、TENS(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation)が使用されます。
TENS装置は、皮膚を通じて低周波の電気刺激を神経に送り、痛みや炎症を軽減します。これにより、患者さんは炎症性疾患に伴う痛みや不快感を軽減し、日常生活の質を向上させることができます。
※炎症性疾患・・・関節リウマチやアトピー性皮膚炎など、免疫応答の調節不全により組織に炎症を生じる疾患の総称
上記に挙げた以外でも、電気刺激により身体機能を維持することで「糖代謝に対する影響」や「認知症予防に対する代替的手段の可能性」などを研究されている方もおり、
今後の研究結果が非常に楽しみです。