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研究員インタビュー

ホーマーイオン研究所は1963年の設立以降、一貫して「低周波治療」を研究し、独自の製品開発を進めてきました。その中でも現在では筋肉へのアプローチを主軸にした「G-TES」を日本全国1,000を超える施設の皆様にお使い頂いております。
今回は、弊社で「筋肉と電気」にフォーカスし、基礎研究を行っている研究員をご紹介いたします。

分析官から研究職へ 

研究者を志しホーマーイオン研究所に入社

Q. ホーマーイオン研究所に入社された経緯などを教えてください

ホーマーイオン研究所に入社して8年が経ちました。前職は主に科学的な分析をする会社に勤めていました。そこでは、例えば建材に使われていたアスベストや、焼却炉から放出されるガスなどの分析をしていました。職種としては分析官でした。

Q. 研究職としてお仕事をされるのは当社が初めてですか?

初めてです。それまでの分析の仕事は主に分析の対象を考察するところまでだったのですが、研究の場合は分析、考察に止まらず、そこからいろいろなものに繋げてゆける創造性のある分野だと思い、研究者を志しました。

何があるのかな?ワクワクする研究

Q. 大学の専攻はどのようなものだったのでしょうか。

生物系で、細胞の動きなどを研究していました。いろいろな分野がある中で、細胞を顕微鏡で見たときの、その形がビジュアル的に面白かったという単純な理由で、これがやりたいというよりは面白そうだなという思いからのスタートでした。対象はヒトの細胞ではないのですが、主に細胞骨格といった細胞の機能がテーマで、細胞の中にもそういった「動くため」のタンパクがあるので、主にそういったものを研究していました。

Q. 現在の研究内容に近い感じでしょうか。

近しいとは言い切れませんが、「動き」という意味では似ているところもあるかもしれません。得意かはわかりませんが、好きな分野ではあります。その反面、電気的なことについては知識が無かったので、まだわからないことがたくさんあると思います。多分、いろいろな発見がまだまだあると思うので「何があるのかな?」といった興味を含めて面白く、ワクワクしています。

ホーマーイオン研究所での研究内容 

B-SESに関する基礎研究

Q. 現在取り組んでいる基礎研究について、簡単にご説明いただけますか。
  また、この基礎研究が自社製品の開発にどのように関連していますか。

具体的には、ラットに対してB-SESで刺激を与えたときに、どういった機序で緊縮抑制効果が得られているかというところがメインの研究内容になります。筋肉の短縮、強縮について、これまでのB-SESの効果の裏付けを取ってきた段階で、これまでのものからちょっと進んだ新しいモードで効果的なものがないかを研究しています。筋萎縮抑制効果についての研究や、筋肉のトレーニング、レジスタンストレーニングについての研究は他でも結構行われているのですが、現在行っている研究は電気刺激だけで研究しているものは他になく、これは我々独自の研究だと思っています。
B-SESが備えている機能を追求し、これで新しいことが見えたら、新しいモードでより筋萎縮抑制に効果があるかもしれない、また違うような使い方が出来るかもしれない、提案できるかもしれない、という可能性があると思っています。

今まで誰もやったことない、調べても出てこない事、それが研究

基礎研究の過程で直面する課題

Q. 基礎研究の過程で直面している主な課題や問題点は何ですか?

我々が行っている基礎研究を含めて、これは研究というもの全体に当てはまると思うのですが、要は、研究って今までやったことないことをやる、誰もやったことない、調べても出てこないことを追求してゆくのが研究になると思うので、もちろん研究においての仮説は立てますけれど、思った通りに結果が出ないことなんて常日頃あるもので、日々トライアンドエラーの繰り返しです。研究はそこを突き詰めてゆくものだとは思うのですが、やはり会社に所属している以上は結果を出してゆく必要がありますので難しい面もあります。しかし、その難しいところが面白さでもあると思いますので、そこはネガティブには捉えてはいませんし、苦しむのは嫌ではありません。
具体的には動物用のB-SESが既製品としてあるわけではないので、それは実験用の電極1つについても開発のメンバーと相談し合いながら、それもあれも試行錯誤といいますか、常に改変、改善を繰り返しています。実験においても、ラットに使用する電流の周波数がヒトと同じで良いのかなど「これならいけそうかな?」といった方策を1つ1つ潰してゆくという形で研究を進めています。
また、こうした研究を進めてゆく前段階で、実験を始めるまでの条件を固めるまでにも時間がかかりますので、研究のスピード感というものはなかなか得られない状況です。こうした試行錯誤に時間がかかってしまうことについては、会社にも理解していただいているので、実際はかなり良い環境の下で進められていると思っています。

基礎研究が製品作りに貢献する

基礎研究は、その成果が目に見えて現れるまでに結構時間がかかりますし、研究の結果が実際にどう役に立つのかというところが見えにくい、具体的な成果に直結しにくい部分もあるとも思っています。しかし、B-SESにおいては、これまでの使用例や、当社が提供してきたサービスの裏付けが研究の根本にあると思っていますので、これまでの実績に研究の成果を付加してゆけると思っていますし、それは大きな効果を得られると思っています。
B-SESが発表されてから10数年経ちますが、私がホーマーイオン研究所に入社した頃は、まだ基礎研究というところではわかっていないところがたくさんありましたし、営業の方々も初めて知るようなことも多かったと思います。ですから、我々の研究はこれからも製品作りに大きく貢献できる部分はあるのではないかと思っています。

研究の中で使用している主な技術と手法

一般的な研究手法とオリジナルな研究手法

Q. 研究の中で使用している主な技術や手法について教えていただけますか?

論文に書いたものの中で言えば、一般的な手法としてはウェスタンブロッティングによるタンパク解析と、PCRによる遺伝子解析、および免疫染色、酵素活性解析が主になります。特殊なもので言えば、動物実験の手法と言いますか、研究の中ではラットにB-SESの電極のベルトを巻いていますが、これは多分特殊な手法になると思います。
実験に使用したB-SESの電極ベルトは当社の相談役や開発チームのメンバーに協力してもらって作ったもので、布の上にカーボンを貼り付ける形で作成したものです。このような形でのベルトエレクトロード(Belt electrode)を使用した実験は世界でも例は無く、着るタイプと言いますか、装着部分に電極パッドが入った形のものは良く見られますが、B-SESのようにベルト全体が電極になっているタイプを使用した研究は海外の論文を検索しても出てきたことがないので、これは完全にオリジナルな研究手法だと思っています。

研究を進める上でのイノベーション

需要の創造と快適さ、満足さの追求

Q. 研究を進める上での「イノベーション」として、どのような点に重点を置いていますか? 新規性や独自のアプローチなどがあれば教えてください。

ちょっと抽象的な感じにはなるのですが、当社の理念・方針の、「需要の創造と快適さ、満足さの追求」というものが、研究のいちばんの指針になっています。当社の基礎研究は、所謂一般的な基礎研究の定義に比べて、その成果に直結しやすいと思っています。
研究においては、実際にB-SESを使われているお客様や社内からの意見や要望をいただいていて、そういった意見を交換し情報を集めることが研究の重要な資料になっています。それはものを創造してゆく上でとても大切だと考えていて、そういったところは現在の研究にも十分に活かされています。
当社の製品はこうした研究を重ねて、きちんと地盤を固めたうえでの製品開発をしています。それは基礎研究、製品開発、美容・医療の販売チームが一体となっての製品作りだと思っていますし、これは先ほどのラットに装着する電極ベルト作成のお話にも繋がってくるのですが、こうした「一から考える」といった独自のアプローチが、製品作りへの裏付けになると思いますので、我々研究をする者にとっては、どういった裏付けをすればお客様に納得して使っていただけるか、研究の成果が製品に対してどう役立つかを考えることはたいへん重要だと思っています。

研究の成果について

国際論文の発表

Q. これまでに取り組んだ研究で、特に印象に残っている成功例や成果についてお話しいただけますか?

やはり、いちばん印象に残っているのは、2022年に研究論文を出せたときです。「Scientific Reports」という、研究者の間では有名なジャーナルで、こちらに国際論文が掲載されました。

Q. 論文を執筆された経緯などを教えてください。

私は入社以来、当社の研究と並行して日体大の中里先生に師事をして、大学院の研究生として博士号の取得を目指しているのですが、その博士号取得の条件に国際論文を出すというものがあり、こちらの研究も続けていました。日体大での研究については、西山先生に紹介していただきまして、西山先生にも大変お世話になりました。

Q. 博士になられるのですね。

来年にはなれると思います。名刺にPh.D.と書けます!

国際学会への参加

Q. 論文の発表でイギリスでの学会に出席されたということですが、そちらについても教えてください。

今年の7月に第29回 European College of Sports Scienceという学術集会に参加する為、イギリスのグラスゴーに行ってきました。学術集会は60か国以上から集まった約3,000人以上が参加していて、ポスター・口頭発表が約1600演題という非常に規模の大きなもので、このような大規模な学会には今まで参加したことが無かったのでとても面白かったです。
中でも、現在のスポーツ研究の世界的な潮流を感じることができたのは日本で研究をしていただけではわからないことだったので、学会中はいろいろな発表やお話を聞く機会もあり、それは貴重な経験になりました。

Q. 国内の学会についてはいかがでしょうか。

8月に、運動生理学会に出席しました。こちらではランチョンセミナー、演題発表で参加しました。来年に向けては骨格筋電気刺激研究会、体力医学会に出席する予定があります。

今後の研究の方向性や目標

研究成果の実用化に向けて

Q. 今後の研究の方向性や目標と、製品開発に向けて意気込みや期待することがあればお聞かせください。

大切なのは「裏付けを取ること」で、研究により解明出来たものの裏付けをしっかり行い、その裏付けをさらに応用してゆくことが重要だと思います。
具体的には、私は現在、筋委縮抑制を主なテーマに据えて新しいB-SESの開発に繋げてゆく研究をメインにしていますが、決してそれだけではなく、お客様や社内からの要望に向けて研究を進めてゆく可能性もあると思っています。在宅の高齢者の方、また、内部障害系の患者さん、例えばICUの患者さんや透析の患者さんにとって、筋萎縮の抑制は大変重要だと思いますし、現在行っている研究はそちらにも役立つと思っています。
また、筋肥大や、筋強化といった方面の研究についても、やってゆく可能性はあると思っています。さらに、共同研究というかたちで様々な分野での研究も進んでいます。

研究を通じて得た学びと成長

粘り強く続けること

Q. あなた自身がこの研究を通じて得た学びや、個人的な成長についてお聞かせください。

私自身は、当社に入社するまでは筋肉に対しての研究の経験は無かったので、中里先生の研究室で教わり、日体大との共同研究を行いながら知識や技術を習得してきました。繰り返しになりますが、研究の中での試行錯誤や検討にかかる時間は大きくなってしまうのですが、そういった中で大切なのは粘り強さだと思います。
私自身、試行錯誤の中で粘り続けることでB-SESが将来的にどう患者さんに役に立つか、B-SESを使われる先生方にどう納得して使っていただけるかということを想像しながら研究できるようになり、そこに大きな学びと自分自身の成長があったと思います。そこでの学びが結果として論文や学会での発表に繋がっていると思いますし、それは成果と言って良いと思います。

ホーマーイオンは、生体への電気刺激の応用技術を生かしながら、各研究や異分野企業との共同開発を通じて、皆様に、引いては患者の皆様にお役立て頂ける商品開発を目指しております。

<宇野研究員 論文情報>

題名:Low-frequency electrical stimulation of bilateral hind legs by belt electrodes is effective for preventing denervation-induced atrophies in multiple skeletal muscle groups in rats
書誌情報:Scientific Reports/2022 Dec 8;12(1):21275.
DOI:https://doi.org/10.1038/s41598-022-25359-z

題名:Belt electrode tetanus muscle stimulation reduces denervation-induced atrophy of rat multiple skeletal muscle groups
書誌情報:Scientific Reports/ 2024 Mar 11;14:5848
DOI:https://doi.org/10.1038/s41598-024-56382-x

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