2023年3月取材【アーカイブ配信】
5台のB-SESを対象患者・目的などで適宜使い分け
ー貴院及びリハビリテーション科の特徴
●福家先生
いろいろな患者さんがいる病院のため、リハビリのセラピストはなんでも診れないと困ります。そのためどんな患者さんにも対応が出来るようにトレーニングをしています。
年齢層も0歳から100歳代まで幅広く、急性期病院だからこそ早期に離床するという世の中の流れに対応できていると思います。
ーB-SESを知るきっかけ
●谷地先生
学会に行って、機器展示ブースで見て知っていました。また、会場で簡単なデモで実際に体感したこともありました。特に私は集中治療領域が担当だったので、寝たきり状態や動かせない患者さんに対して、電気刺激で筋収縮が出来る器械ということで、B-SESは前から気にはなっていました。
今となっては院内に多くのB-SESが配備されているのでいつでも使える状態ですが、B-SESが導入される前は「こういう患者さんにB-SESを使いたいな」という思いがすごくありました。
ー使用している診療科と用途
●山中先生
1台は感染病棟でCOVIDの陽性患者に対して使っています。もう1台はICUで、残りの3台はリハ室で管理して1台はリハ室、2台は一般病棟で使うことが多いです。また、リハ室管理の3台のうちの1台は単電極専用で運用しています。単電極は外来と入院それぞれで、麻痺の促通や神経障害などにも使っています。私は四頭筋の促通や、術後の収縮の悪い人の促通にも使っています。
B-SESの用途で多いのは、廃用症候群の患者さんや脊髄損傷も多いですね。脳卒中の患者さんにも使います。あとは心外循環器で身体を動かすのが難しい患者さんに使うことが多いです。一般病棟で使う際は移動性が良いのでリハ室から持って行き
ます。
ーモードの使い分け
●山中先生
筋トレモードと有酸素運動をケースバイケースで使い分けていますね。循環動態が悪い患者さんには有酸素運動のモードを実施しますし、運動器の免荷管理中で歩けない患者さんには筋力を維持したいので、有酸素運動と筋トレのモードを両方行ったりします。「筋トレ」→「有酸素運動」→「筋トレ」など、1日でB-SESを60分実施することもあります。症例毎にプログラムを作って行っています。
ー簡易なベルトの着脱・本体操作
●山中先生
若い人は機械に対する理解も早いため、整形外科では何度かご一緒して処方したあとは、ご自身でB-SES を操作して頂く方もいます。またベルトの着脱は簡単なため、最初にベルトの巻き方を教えてあとは患者さんご自身で行って頂くこともあります。その際は治療をスタートするときに「かけていいですよ」と声掛けをして治療時間を把握しています。B-SES を使用した際には心電図モニターにノイズが載ることを逆に利用して、ノイズが載っていれば刺激をかけているなと遠隔管理をしたりする症例も何
例かありました。
ーB-SES の多様性
●谷地先生
Leriche 症候群(大動脈閉塞症)の方にB-SES を使用し、その効果を学会で発表して良い反応がありました。また対麻痺の患者さんに、ティルトテーブルを使った状態で並行してB-SES をかけてみたりもしました。二重で負荷を加え、荷重の感覚と併せて電気刺激を少し与えるというイメージです。寝た状態で筋肉の動きを確認したときに、反応が通常かけるときよりも良くなっている印象があったので、場合によっては行ったりもしています。
安全を担保した状態で、ICUや小児でのB-SES利用
ーICUでのB-SES使用状況
●谷地先生
現状は理学療法士がセッティングして操作も行っています。もちろん看護師でB-SESを使えればシームレスでできると思います。しかし、ICUだと管が多かったり患者さんに付けるものが結構たくさんあって、B-SESの装着も大変だったりするため、今は理学療法士が対応しています。
また、やはり集中治療室は特に循環動態が変わりやすい患者さんがいますので、B-SESを実施しているときも理学療法士さんがほぼ付きっきりで対応しています。
ICUでB-SESを使用する際、モードについてはその病態で変えています。栄養状態が悪い患者さんに関しては、あまり電気刺激の強度を上げないで代謝モード(有酸素運動)でやっています。B-SESを不快に思う患者さんもいらっしゃいますので廃用モード(筋トレ)は基本的には廃用ソフトで優し目に実施しています。
ICUだと管がいっぱい入っているケースもありますので、そういうところに響いて痛いのか、痛みを訴える患者さんもいます。その場合1回代謝モードで実施すると意外に痛みが無くなったりします。慣らし運転ですね。
学会で聴講したときに、B-SESは弱い刺激でも効果があるとおっしゃっていた先生もいらっしゃったので、弱い刺激でも入れてみて、慣れてきてボリュームを上げられるようになれば上げれば良いかなと思って調整しながら使用しています。
●山中先生
また、COVID-19患者さんに対しては、少し前はECMOを装着した患者さんにも使っていました。鎮静して動かせない患者さんの廃用症候群の予防として使っていました。あとは、感染病棟なのでどうしても環境や使用できる物品が制限されてしまうため、歩行練習もなかなかできません。エリアも狭いため、そういった患者さんの有酸素運動や廃用予防で用いることがほとんどです。
ー小児へのB-SES利用
●福家先生
私は小児科が担当なので、小児にもB-SESを使用しています。こどもたちには筋肉の緊張を落とす目的で使っています。筋緊張が下がるので、こどもたちはよく「足が軽くなる」と言っています。小児でも通常のベルト電極を使用しています。実際小学校高学年くらいの子にもB-SESを実施しています。
ーB-SES使用の判断
●福家先生
基本的には「医師の指示の下」ですが、ウチの病院は処方してもらうタイミングで、リハビリで何でもできるように教育しています。B-SESは電気刺激なので、その禁忌に当てはまらない患者さんに疾患を選んでやっています。リハビリの我々が選択して、「この人B-SESをやったほうが良いんじゃないか」と話し合って、最初は試すことが多いです。ICUでは心臓血管外科や循環器の医師・臨床工学技士に相談して、安全を担保した状態でB-SESを実施しています。
●山中先生
当院ではリハビリの職員全員にeラーニングを行っていますので、B-SESの基本知識は全員が有している状態です。もちろん福家さん筆頭に上席者も使いますし、1年目・2年目のセラピストもB-SESを使います。
ー使用した感想、患者さんからの声
●谷地先生
基本的に足の動きがほとんど出ない対麻痺の患者さんがいらっしゃいました。しかし、B-SESを使ってからは足の動きが出てきて、随意的な動きもみられるようになりました。患者さんの足にすぐに変化が表れたため、B-SESを使用することでの即時効果を感じました。
●山中先生
元々トレーニングをしていたアスリート系の患者さん、具体的に言うと競輪選手の方は「凄く良かったよ」と言っていましたね。
高齢者の適応で言うと、術後1日目で歩行練習が始められた患者さんがいました。頚部骨折された90歳位の患者さんで、手術前に1週間待機期間があったので、その期間に廃用すると困るため医師と相談して、骨折していましたがB-SESを行いました。比較検討はしていないのでB-SESをやらなかったら立てなかったかは分かりませんが、結果的に術後1日目で歩行練習を始められました。
そのような実績もあり、全体的には廃用症候群の予防としてB-SESは効果があるという印象を受けています。
離床へのファーストステップに。急性期で運用するメリット。
ー急性期病院でB-SESを行う意味
●山中先生
意味はあると思います。怪我したばかりでB-SESを使わない患者さんももちろんいますが、リハビリの動機付け的な意味合いで、「痛くて起きられないね。でも代わりにこの電気(B-SES)をかけると、歩くのと同じようにトレーニングの効果があるよ」とプレゼンテーションすると、「じゃあやりたい」「これで代わりにやれたから私頑張れた」みたいなモチベーションに繋がる部分があります。
筋肥大など数値的な結果は、なかなか短期間では正直難しいなとは思います。しかし患者さんのメンタルの部分や、リハビリをサポートするセラピストの側からみても、循環動態が悪くて離床が難しい患者さんにB-SESという選択肢があり、引き出しのひとつとして活用できることは、急性期で運用するメリットのひとつだと私は感じています。
ー回復期病棟の新設
●福家先生
当院では2024年に回復期病棟が新設される予定ですので、急性期で入院していた患者さんに引き続きリハビリができるようになります。
そもそも私たちは全ての患者さんを家に帰すつもりでやっていますので急性期でも回復期でもゴールは変わりません。回復期に転院する患者さんたちはリハビリをもうちょっと継続する必要があるので、急性期から回復期に病棟が移っただけ、というイメージです。
ーB-SESへの要望
●谷地先生
集中治療領域でベルト電極を腰に巻くのが大変なので、腰に通さなくても巻けたら良いなぁと非常に思います。それができたら使い勝手がかなり良くなるので、B-SESの使用頻度が増えることに繋がってくると思います。B-SESは良い製品だと思いますの、是非そこを改善して頂きたいです。