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国立研究開発法人
国立国際医療研究センター

2022年11月取材【アーカイブ配信】

急性期の患者様の廃用症候群予防に向けて

ーB-SES導入時の背景

●藤谷先生

 昔から脳卒中の急性期の患者様の廃用症候群がテーマになっていて、以前勤めていた病院でも他の先生が研究をしていました。当時は、いわゆる昔からある電気刺激装置でパッドを貼るタイプの器械でした。電気刺激が廃用症候群の予防に有効であることは以前から分かっていましたが、パッドをどこに貼ればいいのかや、火傷の心配などがありました。
 それに対して、B-SES は電極がベルト式で全周に着けることで、肌と電極の接地面積が広くなり、比較的強い電流を皮膚の障害なく流すことができることと、電流の波形が皮膚に対する障害を少なく、出来るだけ痛み無く電流を流す工夫がされているという説明を聞いて、これはいい器械だなと思って導入を決めました。

●谷川先生

 私は心臓リハビリテーションにずっと携わっていて、B-SESを文献等で目にすることは多くありました。しかし、これまでに勤務していた病院ではB-SES を導入していなかったため、実物を見たり触れることはありませんでした。
 B-SES がどういう器械なのか興味はあったので、国立国際医療研究センター病院(以降NCGM)にB-SESが導入されていて実際に扱うことができました。

リハビリ室・ICUなど各診療に応じてB-SESを増設

ーB-SESの用途と効果

●藤谷先生

 NCGMは急性期病院とはいえ廃用症候群の患者様も多くいらっしゃいますので、患者様に良いことはなるべくしてあげたいと思ってB-SESを使っています。病棟の看護師が操作するのはなかなか手が出し難いということもあるので、基本的には1台はリハビリテーション室で使っています。
 当院には嚥下障害の手術目的で入院される方もいます。そういった方は大体50代で体格もよく背が高くて、小脳・脳幹型の失調の方が多いですね。つまりそういう方は急性期に重症でサバイブして2 年位経って嚥下のことで病院にいらっしゃるのですが、背の高い人で失調が強いと、あまり手足の訓練ができてないこともあります。そういう方に、嚥下の手術で入院中の短期間に、できれば四肢や歩行も良くしたいと思っています。B-SESを使うと実感的に効果があります。
 そして、ICU・病棟などの看護師との連携が良くなってくると、リハビリ室以外でもB-SES を使いたいと考えました。そこで病棟に持って行けるように台数があった方が良いなという思いから、2台、3台と増設しました。

ーICUでのB-SESの使用状況と今後の課題

●谷川先生

 ICUでは、基本的には理学療法士がベルト電極のセッティングをして強さの設定を行います。その後、患者様が辛そうにされている場合の出力調整や、終わった後のベルトの取り外しは看護師にて行っています。前機種と比べると操作がとてもシンプルになったため、看護師でも取り扱いやすくなったと思います。
 ただ、看護師がB-SESを使用する際には、腰ベルトの装着が困難な場合があります。腰ベルトはどうしても背中に回さないといけないので、ちょっとマンパワーが必要です。また、腹部外科の患者様の場合には腹部に使用できないので、その点も課題かと思います。寝返りが打てないような重症度の高い患者様には、腹部の表面からベルト電極を巻いて固定するような形で工夫はしていますが、そのあたりがもう少し簡便になると看護師でも取り扱いやすくなると思います。

●藤谷先生

 看護師にお願いしたいことは他にもあります。例えば、体外式呼吸器の排痰システムに関してはとても効果があることが分かっていて、当初はリハビリ科から持って行って使っていたのですが、今では病棟で治療を開始するようになっています。今は病棟とME室で直接やりとりをして、すぐ治療が開始され
るようになっています。
 B-SESもいずれは病棟とME 室で直接やりとりができるように狙ってはいます。問題点は水を付けなければいけない点と、やはりお腹にベルト電極を回すのが大変です。
 あとは診療報酬の算定ができない場合があるかと思います。看護師さんが処置を行うことにより算定ができれば病棟でも広まるかと思います。

透析時の運動療法やフレイル対策にB-SESを使用

ー透析患者様のB-SESの運用

●藤谷先生

 当院は透析科というのはなくて腎臓内科が透析をしています。維持透析はしていなくて腎機能障害が悪化して透析導入するケース、あるいは腎臓内科および他の科に入院中の患者様で透析が必要なケース、またコロナもそうですが急性期の患者様で急性期透析が必要な方などに短期間透析を行っています。それらのケースでも、必要であればリハビリはリハビリテーション科への依頼があって実施しています。その際は、疾患別リハビリテーション料で算定しています。

ーB-SESの実施時間や頻度

●谷川先生

 B-SESを実施する強度に関しては、どうしてもICU の場合は意識障害ある方が多く、痛みを訴えるなどの確認をすることがなかなかできません。そのため、バイタルや血圧、脈拍、呼吸数、ちょっとした苦痛表情などを確認しつつ強度を設定することが多いです。
 実施時間に関しては20分から30分を目安にやることが多いですが、この患者様だからこの時間にするという取り決めは特にはまだ作っていないです。
 ICUに入室される患者様は入退室が多いので、実施頻度は決めていません。コロナの患者様に関しては1日2回、午前午後と2回プロトコールを組むことが多かったです。重症度が高くICU入室期間が長かったため、計画的に行うことができました。今はICU専任という形で1日2時間から3時間、他の者と交代制で行っています。

ーリハビリテーション科でのB-SES使用状況

●谷川先生

 透析患者さんもそうですが、いわゆるフレイルの方にB-SESを実施しています。かなり筋肉が痩せ細ってしまって歩くのも困難な方、負荷を掛けるのがなかなか難しい方、あとはどうしても足の潰瘍などで歩行が困難な方など、そういう方には積極的にB-SESを実施しています。

●藤谷先生

 運動したいが立位でやる運動は肥満のために股関節や膝関節に悪いというような、重度の肥満の患者様がいらっしゃいます。そういう方が心不全を起こしたときなどは、B-SESは適応だと考えています。ただ、重度の肥満の方はベルト電極が回りきらない点が課題です。

廃用症候群の予防や、血友病性関節症への効果も期待

ー医療従事者からみたB-SESの効果

●藤谷先生

 私はとてもB-SES はいいなと思っています。実は、血友病性関節症の患者様は関節が悪いので、あまり四肢運動ができない方が多いです。その方にB-SESを在宅で使っていただくという臨床研究を組みました。まだ論文は途上ですけれども、既に学会発表までは行いました。その時の感触では、きちんと使用した方は、とても効果があると言って本人も喜んでいました。しかし、やはりお腹が冷たいのは嫌という感想もありました。

●谷川先生

 最近はテレビのコマーシャルでやっているような電気刺激の製品もあって、患者さんや看護師さんに説明するのは、受け入れが良くなった印象はあります。
 ネガティブな面では藤谷先生が仰っていたとおり、水を使う必要があるところです。看護師さんたちは濡れることをすごく気にされますし、僕らも衛生面には気を使います。昨今は衛生管理は特に求められるので、電極シートを清潔にする方法や、他の患者さんに使い回す時の対処方法はかなり気になります。患者さんの使用感に関しては、結構喜んで使ってくださる方もいらっしゃいます。

ーB-SES使用の判断

●藤谷先生

 当院の場合、整形外科以外は、コンサルテーションを受けたリハ専門医が診察をして指示を出していますので、その時点でB-SES適応症例をあえて指示する場合もあります。「なるべく使ってね」という感じです。その他に、理学療法士から「この人はB-SESをやっていいでしょうか?」と聞かれることもあります。その場合には確認して、禁忌がなければ実施しています。